工賃向上は、時間単価がカギ!

2025.07.16

工賃向上を図りたい!でも、そのためには何に注目すれば良いのか? 私はセミナーの講師などを拝命することもありますが、この問いに答えられる方は、どこに行っても1割程度です。 タイトルにもありますように、その答えは『時間単価を把握する』ことにあります。 では何故、時間単価を把握することが工賃向上につながるのか、今回は合理的に考えてみましょう。

合理的に考える必要性は?

工賃向上の話に行く前に、何か目標を達成するためには、達成のための 『からくり』 を見極める必要があります。 例えば、100mを速く走ろうと思ったら、その 『からくり』 は、歩幅と足の回転数にあるでしょう。 歩幅と足の回転数をどう増やしていくべきなのか、そのための必要な筋肉はどこに付ければ良いのか、その筋肉を付けるためにはどのような練習をすればよいのか。それは、スタート時から発揮されるのか?発揮されないならどうすればよいのか。 このように先ずは 『からくり』 を見極めて、そこから逆算で、戦略・戦術、実施事項を考えていく必要があります。 気合と根性があれば大丈夫という人もいると思いますが、それはレース本番や練習継続のために発揮するものであって、間違った方向性に進んで結果が出ないことも多々あると思います。 気合と根性が空回りし、徒労に終わらないためにも、合理的な 『からくり』 を見出す必要があります。

工賃向上の『からくり』とは?

例に挙げたようなスポーツに限らず、世の中の事象は要因が多すぎて、これをすれば成果が出ると言い切れることは稀です。 ところが工賃向上のからくりは、実は簡単に分かります。それは、工賃を算出する計算式が決まっているからです。 つまり、算出の計算式から逆算すれば、方向性は簡単に見いだせるのです。 (もちろん実際に実施し、成果を出すのはそう簡単ではありませんが・・・。) それでは、工賃計算の算定式を見ていきましょう。

令和5年度から、工賃算出の計算式が大幅に変わりました。厚生労働の資料によると、上記のような式が示されています。 この計算式は、実際に1年間が終了して結果を計算する場合、帳簿等から数字を拾って来やすいため便利な式です。 しかし一方で、今後の計画を立てるなど、未来の事を考えるのには向きません。 何故なら、この式には、括弧があったり、割り算があったりして式が複雑なためです。 感覚的に何をどうしたら工賃の値が大きくなるのかが、分からないのです。 では、どうすれば良いのか。それは式を変形すれば良いのです。 みなさん、中学校1年生の時に文字式というのを習ったのを覚えていますか? 例えば、「Aで割る」というのは「1/Aを掛ける」というのと同じだと覚えていますか?

平均工賃月額(X)=年間報酬額(a)÷(年間延利用者数(日:b)÷年間開所日数 (c))÷年間開所月数(d)

と文字に置き換えどんどん変形していきます。

X=a/(b/c)/d=(a×c)/(b×d)=(a/b)×(c/d)  ※途中の変形は省略します。

そして、最後に文字に戻すと下のような式になります。

それぞれの赤枠は何かを考えてみましょう。 年間報酬額を年間延べ利用者数(日)で割るということは、1日当たりの利用者の報酬額、すなわち『平均工賃日額』になります。 年間開所日数を年間開所月数で割るということは、「1月当たりの開所日数」になります。つまり

という極めてシンプルな式になります。 もう少し深堀してみましょう。1日あたりの利用者の報酬額は、平均工賃時間額×1日あたりの利用時間と変換できるのは、感覚的に分かるでしょう。(学生時代のアルバイトを思い出してください。時給×労働時間で貰える賃金が決まっていたはずです。)

掛け算の形にすれば、それぞれの項を増価させれば、結果が大きくなるのがわかります。つまり、

ということが分かります。『からくり』が見えてきましたね。

工賃向上のための具体的な対応方向性は?

工賃算出の計算式を変形しながら見てきましたが、具体的にどうすれば良いのかまで考えないと意味がありません。 では、右側の項から見ていきましょう。

1. 月当たりの開所日数を増やす

月当たりの開所日数を増やせば、平均工賃は増加します。 理論的には、そうなのですが、皆様の事業所の開所日数、そう簡単に増やせますか? 極端な事を言えば、土日祝も開所しますか?支援者さんの負担も大きくないですか? 中にはうまくローテーションさせて365日開所という事業所もあるようですが。それはそれで凄いです。 でも一般的は無いと思います。 また、例えば平日だけ開所している事業所が、365日開所しても、倍にはなりません。 1月は31日か30日(2月除く)と決まっています。1月当たり40日開所とかはできないのです。 つまり、否定はしませんが、あまり現実的ではないと言えるでしょう。

2. 1日当たりの利用時間を増やす

開所時間を早朝から深夜までにすれば、平均工賃は増加します。 これも理論的にはそうなのですが、皆様の事業所で実施できますか? 支援者さんは疲弊しませんか?利用者さんの体力は持ちますか? これも多少は増やすことができても、劇的に増やすことは難しいと思います。 もちろん、支援の仕方の工夫によって、午前中のみ利用されていた利用者さんを1日利用できるようにする、等の方策は、そもそも就労を目指すべきB型事業所の本来業務なので、工賃とは関係なく、利用者さんの様子を見ながら最大限に実施していると思います。ただ、現状から大きく伸ばすのは難しいかと思われます。

3. 平均工賃時間額を増やす

多くの事業所で、工賃支払い規定に基づき、1時間当たりの支払額を決めているのではないでしょうか。 年間などの一定期間を定めて、実際の生産活動による収益の差を、ボーナスなどで支給するといった例もよく耳にします。 つまり、実施する生産活動の各案件の『時間単価』を増加させれば平均工賃は増加します。 では、案件の『時間単価』を増加させるのにはどのような方法があるのでしょうか。 実は、その方法は3通りしかありません。(仕事がある程度充足しているという前提で考えてみます。)

①営業を頑張って、時間単価の良い新案件を獲得し、時間単価の悪い案件と入れ替える

②営業を頑張って、単価交渉を行い、旧来の案件の時間単価を向上させる

③生産活動の方法等を見直して生産性を向上、それにより時間単価を向上させる(単価は同じだが沢山こなす)

現状の時間単価を確認しながら、この3通りの方向性で、より具体的な取り組みにブレイクダウンしていくと、真の工賃向上施策が見えてきます。 ただ、ここで気を付けないといけないことがあります。 私の経験だと、営業がしたくて障害者福祉サービス事業所に勤めていますという支援者さんを見たことがありません。 逆に、営業はできるだけしたくありませんという支援者さんの方が圧倒的に多いかと思います。 そうなると、何をしますか?と聞くと。上記③をやります!という答えが圧倒的に多くなります。事業所内で頑張りますと。

でもよく考えてみて下さい。最近始めた案件ならともかく、何年もやっている案件で、劇的に改善は可能ですか? 中には、よっぽどやり方が下手で、倍ぐらいの速度で出来るようになった例もあります。が、稀です。 既に、様々な工夫(ものの配置や、治具の活用など)をしていませんか? もちろん生産活動の場ですから、ダラダラしないことは必要ですが、そんなにダラダラしていますか? もうこれ以上、工夫の余地がないなかで、生産性向上を図ろうと思うと、単純に速く動くしかありません。 ビデオデッキで、テレビ番組等の録画を早送りすることを想像してみて下さい。 現状から倍速で動き続けるのは不可能だとわかると思います。

③を否定するつもりはありません。 ただ、③一本鎗で工賃向上は図れないということがお分かりいただけたでしょうか。

これを理解して頂きたいと思います。 ただ、急には営業スキルは身につかないですよね。

選ばれる事業所のなり方は、別のコラムに書きたいと思います。

事業開発担当 山口 健俊

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